「失いたくないもの」にネームタグ・生産性のためにネームタグ
ネームタグの基本的で重要な役割に「所属・帰属・所有関係」を明示するというものがあります。小学校に上がるとき、ランドセルをはじめ教科書、ノート、筆箱、えんぴつの一本一本にいたるまで、名前を書いてもらったことが誰しもあるはず。そのような「記名」もまた、ネームタグの基本的はたらきです。
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どこかへ行ってしまいがちな大事な存在に
「何かをなくさないようにする」のもネームタグの基本的な役割のひとつです。
たとえば、認知症を患っている方や小さな子どもたちは、すこし目を離したすきにどこかへ行ってしまうことがあります。認知症の方や子どもですと、幸いにして誰かに保護されたとしても、自分の名前や住所、電話番号などをはっきりと答えられないこともありえます。そんな時、ネームタグがあるとおおいに助かります。本人の名前、住所、電話番号などを、やや大きめのタグに記して、すぐに見つかるようなところに付けておくといいでしょう。
ペットの迷子札にも
「自分のことをうまく説明できない」存在というと、犬や猫などのペットもあります。完全室内飼育ならともかく、外で飼っていると、やはり迷子になる可能性はあります。そのため、首輪などに飼い主の住所、電話番号、名前などを記したネームタグを着けておくと無事に帰ってくる可能性が高まります。
犬に関しては、法律で義務づけられています。
- 居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
- 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
- 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
これら3つが法律で定められており、違反すれば罰金が科せられることもあります。
ここで「鑑札」と「注射済票」を犬に付けてやる必要がありますが、これらの形状や材質、形式についても法律の定めがあります。「耐久性のある材料」で「首輪、胴輪、鑑札などに装着」でき、「犬鑑札」や「注射済」の文字、都道府県名、注射実施年度が特定できる記号が入っていることなどが求められます。
鑑札と注射済票を付ける首輪などに、犬の名前と飼い主の名前、住所、電話番号などを刻んだプレートもいっしょに付けてやれば、「迷子札」の機能も持たせることができます。もちろん、猫の場合も同様です。鑑札や注射済票が不要なところがちがうだけです。
万が一にそなえたネームタグも
「自分のことをうまく説明できない」状況というのは、かならずしも認知症の方や子ども、動物にばかり生じるものではありません。若者や大人であっても、災害や事件事故に遭遇して、意識レベルが低下した状態になってしまうこともありうるわけです。
そのような万が一のケースにそなえて、特別なネームタグを持つようにしている人たちもいます。この目的のためのネームタグとなると、書き記される情報は氏名、住所、電話番号だけでなく、血液型やアレルギーの有無など、救急医療従事者に伝えたい情報も加わります。
また、ネームタグの形態もすこし変わってきます。万が一にそなえるものですから、情報が読みにくくなってしまう事態は避けたいのです。そのため、金属のプレートに文字を刻み込んだものであったり、氏名や血液型をはじめとする情報を書いた紙を巻いて、ゴムパッキンがついていて防水密閉できる金属製カプセルに入れ、これを首から下げられるようにしたものであったりと、堅牢な形になることが多くなります。
モノはもちろん自分のことを説明できない
ネームタグのもっと基本的な役割に立ち帰りましょう。なくしたくない大事な持ち物に付け、所有者の情報を明示するのもネームタグの重要な役割です。
学童用のランドセルや学生カバンには最初から名札を入れるポケットが用意されていますので、ここにネームタグを入れます。大人用のビジネスバッグにはそういったものはなく、カバン本体に直に名前を書き込むわけにはいかないので、ネームタグを付けます。持ち手のところにぶら下げたり、側面の輪に通したりといった形で付けます。
材質やデザインはバッグ本体の雰囲気に合わせます。合成皮革とビニールカバーといったようなものなどがあります。
ネームタグには勤務先や氏名、電話番号などを記します。ネームタグを付けておけば、ビジネスバッグをどこかに置き忘れるなどした場合、手元に戻ってくる可能性をわずかでも上げることができます。幸いにして駅などで遺失物として預かられている場合でも、自分のものであることを証明することが簡単になるでしょう。
海外旅行に持っていくスーツケースとなると、多くの人がネームタグを付けます。低い確率とはいえ、「ロストバゲージ」が起こりうるからです。チェックインした預け入れ荷物が、1便あとの飛行機に載せられてしまったり、ひどい場合は別の目的地に運ばれてしまったりというケースです。こういった場合にそなえて、スーツケースなどにネームタグを付けておけば、取り戻すまでの時間が多少短縮できます。
工場や倉庫で重要な役割を果たす「タグ」
空港で預け入れするチェックインバゲージには、「KIX」(関空)や「NRT」(成田)など、運び先の目的地をあらわす略記号を記したタグが付けられます。タグは、チェックインバゲージを管理するシステムにとって不可欠な目印となっているわけです。
このように、ネームタグが「モノの流れ」のカギになることがあります。そしてタグは、工場や倉庫などの中で物づくりや流通の効率化に応用されています。
工場の例としては、トヨタ自動車の「カンバン方式」が代表的です。工程の「どこで」、「いつ」、「何が」、「どのくらい」必要なのかを表示し、「ジャスト・イン・タイム」で部品やサービスを提供し、「ムダ、ムラ、ムリ」を無くして生産効率を極限まで上げています。
自動車に限らず、部品や工具が工場内を流れる経路は複雑になり、タイミングも厳しく合わせなければなりません。この流れを効率的に管理するために、ICタグがよく使われるようになっています。非接触型のICでセンサーに情報を伝え、そのタグが付いたモノがどのように流れるのかをコントロールし、いつ、誰が、何を、どうするのか、といった工程の流れを効率的に進める仕組みです。
他方、ネット通販などeコマースたけなわの昨今、物流の効率化も優先度の高い課題になっています。ここでもICタグが大きく効率化に貢献しています。高速道路のインターチェンジ付近には「巨大」と言っていい規模の物流倉庫がしばしば建設されます。その巨大倉庫の中で、ひとつひとつの商品や荷物に付けられたICタグが、非接触型センサー付きの制御システムにより、「品物の内容・種類」、「送り先」、「配送日時」などに応じて自動的に振り分けられることを可能にしています。最近はAIを応用してさらに効率化する試みも始まっています。
今後はIT技術による高機能化も
クレジットカード、交通機関系カード、電子マネーカードなどカード類はすでにかなりのIT化が進められています。これらとネームタグが融合したケースはすでに見られます。たとえば、社員証や学生証が電子マネーカードと一体化し、社員食堂や学生食堂での支払いに使える……などです。
また、上記のような「なくしたくない存在」に付けるネームタグだと、GPSとの親和性が高いでしょう。PCやスマートフォンで、人やペット、なくした荷物のありかが確認できればとても助かります。
今後のネームタグは、IT技術やAI技術と結びついていく中でさらにいっそう重要性を高めていくでしょう。